『メランコリア』 憂鬱と名付けられた美しい惑星が招く終焉



カンヌ映画祭の記者会見で、監督のヒトラー共鳴発言で話題になった作品です。

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MELANCHOLIA 
2011年デンマーク/スウェーデン/フランス/ドイツ 135分

あらすじ:新婦のジャスティンは新郎のマイケルとともに、結婚パーティが行われる姉夫婦の邸宅へと向かっていた。しかし細い道でリムジンが立ち往生、2人は予定時刻を大幅に遅れて到着することに。それは姉のクレアとその夫ジョンが準備してくれた盛大なパーティだったが、情緒不安定なジャスティンはわがままな振る舞いで周囲を困惑させてしまう。それから7週間後、惑星メランコリアはいよいよ地球へと迫り、クレアは不安と恐怖で落ち着きをなくしていく。そんな中、すっかり憔悴していたジャスティンも、すでに月よりも大きくなったメランコリアの姿を初めて目の当たりにするのだが…。                                    (allcinemaより)


ワーグナーの「トリスタンとイゾルテ」の音楽にスローモーションの映像シーンが流れる冒頭、

話は1部「ジャスティン」、2部「クレア」の2部構成で進みます。

・1部:新婦ジャスティンと新郎マイケルは姉クレアと義兄ジョンのゴルフコース付きの豪邸での結婚披露宴に

2時間も遅れて到着し姉夫婦を不機嫌にしてしまう。

最初は幸せそうだったジャスティンは段々と気分が沈み奇行を行い始める。

どうやら彼女は心の病を患っている様なのだがそんな彼女をマイケルは理解できない。

結局披露宴が終わるころに2人は破局を迎える。

・2部:メランコリアと呼ばれる巨大惑星が地球に近づいてきていた。

クレアはジョンから地球の側を通るだけと聞いていたが落ち着かない。

披露宴から7週間経ち体調をすっかり崩していたジャスティンはクレアの世話を受けていたが、

メランコリアが地球に衝突すると聞いてからは落ち着きを取り戻していた。


監督が鬱病に苦しんでいた頃に出席したセラピー・セッションから着想を得たようで、

鬱病の人々は先に悪いことが起こると予想し、強いプレッシャーの下ではもっとも冷静に行動する傾向がある

とセラピストに言われたようで、ジャスティンと重なりますね。

情緒不安定なジャスティンをキルステン・ダンストが演じ、カンヌ国際映画祭主演女優賞を獲得

姉クレアにシャルロット・ゲンズブール、妹に対しては愛憎入り混じった気持ちを持ってます。

キーファー・サザーランド演じるジョンは、裕福だけれど俗物の小心者


ジャスティンの上司ステラン・スカルスガルドは嫌味で利己的。

新郎マイケルにアレキサンダー・スカルスガルド、ウエディング・プランナーにウド・キア

豪邸の執事リトル・ファーザーに『007 慰めの報酬』ミスター・ホワイトのイェスパー・クリステンセン

アクのある登場人物たちを豪華なキャストが演じています。


想像していたほど難解な映画ではなかったですね。

最初は豪華なキャストに目を奪われますが、出番はそれほどなく、

クレアとジャスティンに絞って話は進みます。

世界の終末を迎えても舞台は屋敷周辺のみ。登場人物はクレアの家族とジャスティンのみ。

世間がどうなっているのか、他の人たちはどうしているのかもまったくわからない。

良識のある大人だったクレアがすっかり取り乱してしまうとき、

それまでは不安定だったジャスティンが落ち着いて導きます。

醜い現実を受け入れられなかったジャスティンには、終末が恩恵に感じられたのか。

宗教色は特に感じられませんでした。

映像は絵画の様に美しいのですが、終始客観的に見ちゃいましたね(^_^;)