ファントム by スーザン・ケイ

2004年映画版『オペラ座の怪人』のDVDレヴューの複数に、この小説名が出てくるのを発見

興味をひかれて読んでみました!

後にオペラ座の怪人と呼ばれるようになるエリックの生涯

世界を転々とすることになる数奇な人生に惹き込まれます!


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                    Phantom by Susan Kay       1989年作

19世紀、フランス。夫を亡くしたマドレーヌが失意の中で産んだ長男エリックは、この世のものとは思えない恐ろしい容貌をしていた。以来マドレーヌは我が子をどうしても愛することができず、仮面をかぶせて屋根裏に閉じ込める。やがてエリックのずば抜けた頭脳は顕著になり、幼くして建築学を極めるとともに音楽の方面でも類いまれな才能を発揮。だが八歳になったとき、自分がいると母にも危険がつきまとうと知ったエリックは、自ら家を飛び出した…。あまりにも有名な〈怪人〉の生涯を、生い立ちから書き起こす感動作。                               (「BOOK」データーベースより) 


ガストン・ルルーの原作を読み、

クリスティーヌやラウールがエリックになぜそこまでこだわったのか、

しいては6か月間しか書かれていないエリックのそれまでの人生に思いを巡らすようになり

それ以前のエリックを書きたくなったと、作者覚書きに書かれています。

ミュージカルは基より映画版もすべて見てイメージを膨らませたと言う通り、

大胆なアレンジをしているものの、イメージを壊すことのないファントムがこの本の中に居ます!


たった一人の肉親である母親からの愛に飢えていたエリック

スバ抜けた天才的な頭脳を持っていたもののその醜い要望ゆえ街を追われることになります。

ジプシーに捕まり見せものにされる惨めな生活の中、次第に生きるすべを身につけ、

ついにそこからも逃げ出し、世界を転々と旅するように。

イタリアで出会ったマイスターから建築を学び、

フランスに戻り念願のオペラ座の建築に携わることになるのですが・・・・・



オペラ座の怪人になったいきさつやクリスティーヌとの出会いはほんの一部に過ぎず、

原作にも出てくるペルシャ人を含め、出逢った人々との交流の中で、

善と悪とをないまぜにした、理性と感情の間で翻弄されるエリックの人生を

情熱的に描き一気に読んでしまいました!

意外な結末には驚きましたが、

深い余韻が残る作品でした。

原作や映画やミュージカルを知らない方でも十分楽しめると思います。