『BIUTIFUL ビューティフル』 絶望の中にも必ず光は存在する
第83回アカデミー作品賞、主演男優賞ノミネート作品
BIUTIFUL
2010年スペイン/メキシコ 148分
あらすじ:スペイン、バルセロナ。この大都会の片隅で、移民や不法滞在者を相手に、時には違法なことにも手を染めて日々の糧を得ている男、ウスバル。麻薬に溺れ荒んだ生活を送る妻と別れ、愛する2人の子どもたちを男手ひとつで懸命に育てていた。ところがある日、彼は末期ガンと診断され、余命はわずか2ヵ月と告げられる。死の恐怖にも増して、何よりも遺される子どもたちの今後が、苦しみとして重くのしかかってくるウスバルだったが…。 (allcinemaより)
『21グラム』、『バベル』のアレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ監督作
主人公ウスバルは幼い娘と息子を抱えている父親、躁鬱病の妻とは別居中。
子供の面倒を見ながら、移民たちに仕事を斡旋することを生業としている。
死者と会話する能力を持つ彼だが、実の父親にはあったことがなく、父に対する想いを持ち続けている。
体調不良が続き病院へ行くと、ガンで2カ月の命と宣告される。
バルセロナが舞台、ウスバルと子供達は寂れたアパートに住んでいます。
セネガルからの移民は、狭いアパートに数家族が共同で住み、
中国からの不法滞在者は倉庫の様な場所で雑魚寝、暖房もなく病人が居る状況。
ウスバルの兄は少しは景気が良さそうですが、遊びに派手に金を使っています。
ウスバルはセネガル移民を捕まえないように警官に賄賂を渡したり、
中国人に作らせた偽ブランド品などをセネガル人達に売らせたりして、
いろいろと面倒を見てやるのですが、なかなか上手くいきません。
突然の余命宣告に、残されることになる子供たちのことを考えて途方にくれます。
移民たちを世話することによって斡旋料をもらっていますが、悪人ではなく、
搾取するだけではなく、周囲の移民たちを気に掛けてもいます。
子供たちと妻も心配なのですが、どうすればいいのか分からず苦悩します。
ヨーロッパの深刻な移民問題が、ここでも描かれています。
悪状況の中でも出稼ぎにやってくる移民たち。
祖国には仕事がなく、あったとしても低賃金。
その移民たちを利用して稼ぐ者、稼ぐ方も決して裕福ではない。
現代社会の閉塞感を強く感じます。
父親との対話、死者との対話が挟まれ、
リアルな現実と現実を超えた世界が交差し、不思議な雰囲気もあります。
後味は悪くはありませんが、
ただただ圧倒されて見終わりました。