『家族の庭』 ハートウォーミングな話を期待すると裏切られます


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                      ANOTHER YEAR     2010年イギリス 130分

あらすじ:地質学者の夫トムと医学カウンセラーのジェリーは長年連れ添ってきた初老の夫婦。それぞれ現役で働きながらも、休日は市民菜園での畑仕事に精を出し、穏やかで満ち足りた日々を送っていた。唯一の気がかりは、弁護士をしている息子ジョーが、30歳を過ぎてもいまだに結婚できずにいることくらい。そんな夫婦のもとを足繁く通うジェリーの同僚メアリーは、男運のなさを嘆いてばかりの大酒飲みで、ちょっとしたトラブルメーカー。どうやら、小さい頃から知っているジョーのことが気になり出したらしい。ところがある日、ジョーが恋人を連れてやって来た。気だてのいい彼女にトムとジェリーも大喜びだったが…。              (allcinemaより)


まず理想的な家族が登場します!

トムとジェリー(こう書くと某アニメになっちゃうね^^;)は60代で今も仲の良い夫婦。

互いに仕事を持ち、休みの日には市民菜園で趣味の野菜作り。

唯一の悩みといえば、独り息子のジョーが30歳でまだ独身なことくらい。

季節の折々で友人達を家に招くのだけど、友人たちはみんな何らかのトラブルを抱えている。

中でもジェリーの同僚のメアリーは男運の悪さを酒で紛らわせていた。


この映画のキャッチコピーが、ここに集まると、喜びは倍に悲しみは半分になるなんですよね~!

それ全く違うでしょ、と思うんですよね。

予告もハートウォーミングみたいな作りになってますけど、

それを期待して見た人はガックリくると思います。

今どき珍しい完ぺきな夫婦トムとジェリー

自分たちが幸せだから、友人たちを気に掛ける余裕もある訳ですね。

メアリー達を食事に招き、愚痴を聞いてあげる。

それは良いことですが、

愚痴を言って少しはスッキリするとしても、問題は解決しない訳で、

逆にこの幸せな夫婦を見て、自分はどおしてこおいう相手を見つけられないんだろう、

こおいう幸せな家庭を気付けないんだろう、と思ってしまうはずなんですよね。

そして愚痴を言ったり大酒を飲んでしまったことに対して、恥じ入ってしまう。

結局この夫婦は、自分を余計みじめにさせる存在だと思うんです。

まあ、私はそんな風に感じました。


トムにジム・ブロードベント、ジェリーにルース・シーン

メアリーにレスリー・マンヴィル、トムの兄ロニーにデヴィッド・ブラッドリー

ジェリーの患者としてイメルダ・スタウントンが冒頭にチラッと出ます。

監督・脚本は『ハッピー・ゴーラッキー』のマイク・リーアカデミー賞脚本賞ノミネート


冒頭でイメルダがジェリーのカウンセラーに掛って、カウンセラーなんか何の助けにもならないと言います。

この作品のひとつの象徴でもある気がします。

カウンセラー的な夫婦、けれどそれだけでは解決にならず、

自分の生活を立て直すには自分自身で生活を見直すしかない。

孤独に耐えられず、老後の不安があり、愛してくれそうな人は愛せず、見当違いな相手に期待するメアリー、

彼女の痛い感じはちょっと身につまされます(^_^;)

人生って優しくないわね、というジェリーの言葉がピッタリな映画でした。