『未来を生きる君たちへ』 復讐と赦しのはざまで揺れる


2011年のアカデミー賞&ゴールデングローブ外国語映画賞W受賞作品

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  HAEVNEN/IN A BETTER WORLD  
2010年デンマークスウェーデン 118分

あらすじ:デンマークで母親と暮らす少年エリアスは、学校で執拗なイジメに遭っていた。両親は別居中で、医師である父アントンはアフリカの難民キャンプで医療活動に奮闘する日々。そんなある日、エリアスはイジメられているところを転校生のクリスチャンに助けられ仲良くなる。折しも一時帰国したアントンが、2人の前で暴力的な男に殴られると、無抵抗を貫いた彼に対し、クリスチャンはやり返さなければダメだと反発する。やがてアフリカへ戻ったアントンの前に、妊婦の腹を切り裂く極悪人“ビッグマン”が負傷者として運ばれてくるが…。
(allcinemaより)


原題は「復讐」ですけど、スサンネ・ビア監督は「赦し」でも良かったと語っています。

2つの話が軸となり、交差しながら進みます。

アフリカの難民キャンプで医師として働くアントンの話と、

デンマークで暮らすアントンの息子エリアスと、新しくできた友人クリスチャンの話。

アントンは毎日長い列で診察を待っている難民を手当てする日々。

お腹を裂かれている妊婦を何人も治療して、その犯人が”ビッグマン”という男だと聞きます。

毎日学校でいじめられているエリアス、転校生のクリスチャンと親しくなり、

クリスチャンがいじめる子を叩きのめしたことで、いじめは止まります。

一時帰国したアントンはエリアスに、クリスチャンも父親から、

仕返しはまたさらなる仕返しを生むだけだと教えられますが、2人は納得できません。

アフリカへ戻ったアントンの前には、病人として運び込まれた”ビッグマン”が居ました!

クリスチャンはアントンを侮辱した男に復讐しようとエリアスに持ちかけます。


こんなこと書くと怒られるのかもしれないけど、見ながら「ワンピース」(漫画)のエピソードを思い出して(^_^;)

元気になれば襲ってくると分かっているのに、飢え死にしそうな海賊団に食事を与えるコックのサンジのエピと、

撃たれたのに自分を撃った相手を恨んではいけないと、死に際に子供たちに話すオトヒメ王妃のエピ。

ボコボコにされても自分の信念を貫く漫画のキャラのようにカッコ良くはいかないけれど、

葛藤しながらも努力している姿は重なるものがありましたし、

戦争の話だったりすると、どうしても他所の国のことという意識がありますが、

テーマが身近に感じられましたね。


スサンネ・ビア監督作は『悲しみが乾くまで』だけ見ています。

アントンにミカエル・バーシュブラント、クリスチャンの父クラウスにウルリク・トムセン

クリスチャンとエリアスを演じる2人の子供たちが上手いですね。

暴力性の中に内面の苦悩をにじませた演技でした。


子供に復讐はいけないと教える大人もまた、それを頭では分かっていても感情が付いていかない状態。

そんな大人の言葉を信用できない子供たち。

自分の苛立ちを復讐という行為で発散させようとするものの、実際は苦いものしか残らない。

愛しているのに子供とうまくコミュニケート出来ない親の痛み。

日常生活の中での話が描かれているので、観客が身近に考えられるようになっています。

最近の外国語映画賞ノミネートのラインナップを見ていると、

復讐の連鎖を止めようというメッセージが多くて、

世界の紛争をどうにかしたいという思いも伝わってきます。