『フォックスキャッチャー』 なぜこうなったのか


ようやく松山でも上映の『フォックスキャッチャー
最終日に駆け込みで地元のアート系劇場シネマルナティックで観てきました!

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FOXCATCHER  2014年 135分

あらすじ:1984年のロサンジェルス・オリンピックで金メダルを獲得したレスリング選手、マーク・シュルツ。しかし、マイナー競技ゆえに生活は相も変わらず苦しいまま。同じ金メダリストでマークが頼りにする兄のデイヴも、妻子ができて以前のように付きっきりというわけにはいかない。いまや、次のソウル・オリンピックを目指すどころか、競技を続けるのもままならなかった。そんな時、アメリカを代表する大財閥デュポン家の御曹司ジョン・デュポンから、彼が結成したレスリング・チーム“フォックスキャッチャー”への参加をオファーされる。この願ってもない申し出を快諾するマーク。最先端トレーニング施設を有するデュポンの大邸宅に移り住み、ようやくトレーニングに集中できる理想的な環境を手に入れたかに思われたマークだったが…。(allcinemaより)



アカデミー賞で5部門ノミネートの本作、実際に起こった殺人事件の映画化です。
タイトルはキツネ狩り、さて誰がキツネなのか。

80年代、ロサンゼルス・オリンピックのレスリングで金メダルを取ったデイヴとマークのシュルツ兄弟。ゴールドメダリストでありながらアマチュア選手でなければいけないため、生活は苦しく思うようにトレーニングに励めない毎日だった。そんな時、デュポン財閥のジョン・デュポンから呼び出され、法外な年棒と専用トレーニング施設の使用を提案される。二つ返事で話を受けるマークに対し、デイヴは家族のために参加できないと答え、マークは兄から離れ、独り立ちしたように思えたが・・・・・。

特殊メイクで今までとはまったく異なるタイプのジョン・デュポンを演じたスティーヴ・カレルは、この演技で主演男優賞ノミネート。知らなかったら気付かないくらいの別人でした。デイヴ役のマーク・ラファロも、うっかりするとラファロと気付かないメイクと演技で助演男優賞ノミネート。弟マーク役のチャニング・テイタムも、内向的で精神的に弱さのある役どころを上手く演じていました。ジョン・デュポンに影響力のあった母にヴァネッサ・レッドグレーブ、デイブの妻ナンシーにシエナ・ミラー、他にアンソニー・マイケル・ホールなど。
監督は『カポーティ』『マネーボール』のベネット・ミラー

音楽がほとんどなく画面も終始曇り空のような色合いで、先の不穏さを感じさせます。幼い頃両親が離婚した後は兄デイヴが親代わりであり、レスリングでも師となった兄の影響力にプレッシャーを感じていたマークは、ジョンという救世主を得て初めて自由になります。内向的で孤独という共通点を持っていた2人は急速に親密になりますが蜜月は長くは続かず、ジョンがデイヴを呼び寄せたために2人の間に決定的に亀裂が入ります。ジョンとマークの仲違いを薄々感じてはいるものの、自分が原因であることに気付かないデイヴ。彼が弟想いで家族を大切にする人物であったがために起こった悲劇。映画を観終わっても、どうしてこうなったのかという想いが拭えませんね。ジョンは強迫性障害を患っていたようですが、それだけでは片付けられない気がしました。