『ルーム』 内と外、それぞれの闘い


遅れて公開された『ルーム』終了前に駆け込みで観てきました。

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ROOM  2015年 118分

あらすじ:
5歳の誕生日を迎えたジャックは、狭い部屋に母親と2人で暮らしていた。外の景色は天窓から見える空だけ。母親からは部屋の外には何もないと教えられ、部屋の中が世界の全てだと信じていた。2人はある男によってこの部屋に監禁されていたのだった。しかし母親は真実を明かす決断をし、部屋の外には本物の広い世界があるのだとジャックに教える。そしてここから脱出するために、ついに行動を開始するのだったが…。(allcinemaより)



原作はエマ・ドナヒューの同盟小説、前半がインサイドで後半がアウトサイド、映画同様ジャックの視点で語られているよう。

狭い部屋で暮らす若い母親と息子ジャック。世界は”部屋”の中だけだと思っていたジャックは5歳の誕生日を迎え、ママから世界は”部屋”の外にあると聞かされる。

母親ジョイにブリー・ラーソン、難しい状況に置かれた女性の気持ちの変化をリアルに演じ、アカデミー賞主演女優賞に輝きました。ジャックにジェイコブ・トレインブレイ、脱出計画を聞かされ怖気付くところなど、こちらもリアルな演技に舌を巻きます。ジョイの母にジョーン・アレン、父にウィリアム・H・メイシー、その他トム・マッカムス、ジョーン・ブリジャース、ウェンディ・クルーソンなど。
監督は『FRANK -フランク-』のレニー・アブラハムソン

予告などである程度の知識は入っていたので、状況に驚くことはなかったのですが、
前半はサスペンス度が高くてドキドキしました。実話ベースかと思うほどのリアリティ。逃げ出す前は状況のリアルさに引き込まれるのですが、後半は感情の変化に考えさせられました。
助け出され自宅に帰り安心するはずだったのに、さらわれる以前のままの自室は、ジョイに奪われた時間の長さと、なぜ自分だけがという感情を起こさせます。それに加えて、世間からの好奇の目やTVのインタビュアーによる一言から押しつぶされてしまいます。逆にジャックにとっては何もかも新しく、ママ以外の人と話すことさえ初めてだった彼は徐々に世界に順応していきます。2人の感情の対比が興味深く、現実的で納得させられました。
ジョイにとっては忌まわしき場所であった”部屋”も、ジャックにとってはママと2人で暮らした幸せな空間。ラストは本当に意味で解放されるために必要な過程だったのだと思えました。
ジョイの両親それぞれの気持ちもなるほどなと思わせられて、リアルで細やかな心理描写を素晴らしい演技で綴った作品。